妊娠初期と化学的流産

妊娠初期はhCGが急激に増加していき10週前後には、ピークを迎えます。例えば遅い時期に妊娠検査薬を使った場合には、人によってはこのピークの時期に試薬が正常に反応するといった上限を超えてしまうこともあります。また、多胎の場合には、単胎よりもhCGの分泌が多くなっていますので、こうした現象を起こしやすくなる可能性があります。

 

なお、ピークを過ぎた後のhCGは減少に転じていきますので胎盤が完成して妊娠の維持がしやすくなった安定期を迎える頃には、かなり少なくなってきています。通常の分娩までは妊娠検査薬が反応する程度の量はゆうに超えています。妊娠検査薬が一般に広く普及してきたことによって、ごく初期のうちに妊娠を知ることができるようになりました。超音波診断で胎嚢の存在が確認できるようになったことなどの臨床上の妊娠の所見がはっきりしてくるよりも前に、生化学的な手法から妊娠が判明していた段階でも流産が起こる事例が見つかるようになりました。

 

このような流産のことを化学的流産(Chemical abortion)と呼んでいます。流産というような名は付きますが、妊娠を意識して早い時期にhCGの検査をしていなければ、通常の月経としか認識されないまま日常的に起こっているケースも多くみられ、妊娠回数や流産回数には含めないとされています。ヒトの場合は他の動物よりも妊娠成功率が低いため、精卵の不着床とともに、着床の直後から妊娠に気付く前後の超早期流産についても自然淘汰としてかなりの割合で発生しています。